東京地方裁判所 昭和59年(行ウ)118号 判決
【主文】
本件訴えを却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
【事実】
第二 当事者の主張
一 請求の原因
1 原告は、左記特許権(以下「本件特許権」という。)の利害関係人である。
番 号 特許第九五九二一六号
発明の名称 化学反応試験片
出願年月日 昭和四八年七月三一日
出願公告年月日 昭和五三年一〇月一七日
登録年月日 昭和五四年六月一四日
2 原告は、本権特許権にかかる昭和五七年一〇月五日付け第四年分、昭和五八年一月一八日付け第五年分及び同年九月三〇日付け第六年分各特許料納付書(以下「本件各納付書」という。)を提出したところ、被告は、それぞれ、昭和五八年四月一五日付け、同年六月七日付け及び同年一一月四日付けで、「権利消滅後の差出(本権は第四年分特許料不納により昭和五六年一〇月一七日に権利消滅した。)」との理由により、本件各納付書を不受理とする旨の処分(以下「本件各不受理処分」という。)をした。
3 原告は、本件各不受理処分につき、被告に対し、それぞれ昭和五八年六月二四日、同年八月一〇日及び同年一一月三〇日に行政不服審査法による異議申立をしたが、被告は、昭和五九年六月一八日付けで右各異議申立を却下する旨の決定をし、同決定書は同年六月二〇日に原告に送達された。
4 本件各不受理処分は、以下に述べるとおり違法であつて、取り消されるべきである。
すなわち、原告は、本件特許権の第四年分の特許料の追納期限である昭和五七年四月一七日を経過した後の同年一〇月五日に特許料及び割増特許料を追納したが、右時点においては、本件特許権は登録原簿から抹消されておらず、このような場合、被告は納付書を受理すべきである。
けだし、特許料の追納期間は、本来の納付期間に納付できなかつた場合の救済のために定められたものであるから、追納期間の徒過についても救済を認めるべきであつて、追納期間中に特許料を納付しなかつた場合であつても特許権の消滅の登録がされない限りこれを救済するのが法の精神に照らしても妥当であり、これを許さないのは不当であるからである。
また、被告は、特許権者に対して、特許料の不納付により特許権が消滅する前に通知をすべき義務があるにも拘わらず、右義務を怠つた。
したがつて、被告のした本件各不受理処分は違法であり、取り消されるべきである。
【理由】
本案の判断に先立つて、本件訴えの適否について検討する。
原告が、特許料及び割増特許料を追納したのは、本件特許権の第四年分の特許料の追納期限である昭和五七年四月一七日を経過した後の同年一〇月五日であることは当事者間に争いがない。
したがつて、本件特許権は、特許法第一一二条第三項により、第四年分の特許料の納付期限が経過した昭和五六年一〇月一七日の経過とともに消滅したものとみなされることとなる。なお、原告は、昭和五七年一〇月五日の時点において、本件特許権の消滅の登録がされていない以上、不受理処分をすべきでない旨主張するが、追加期間内における特許料及び割増特許料の不納付そのこと自体により、特許権は当然に消滅するものと解するのが相当であるから、原告の主張は失当である。また、原告は、被告において、特許権者に対して、特許権消滅前の通知をすべきであると主張するが、法令上右通知義務を定めた規定は存在しないので、原告のこの点の主張も失当である。
右のとおりであつて、本件特許権が既に消滅している以上、消滅後に提出された本件各納付書に対する本件各不受理処分の取消しを求める本件訴えは、訴えの利益を欠くものとして不適法というべきである。
(元木 伸 飯村敏明 高林 龍)